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Memoirs of a Geisha (さゆり)

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私は2年ほど前に原作の小説を読んですごーく面白かったので
中国人女優とアメリカ人スタッフで映画化されると知った時から
一体どれほど酷い映画になるのかと思っていたけど、やっぱり酷かった。

中国人女優とアメリカ人製作者の起用によって完全に失敗しちゃった映画でした。
全キャスト・スタッフを日本人でやればどれほどマシになっただろう。
って、少なくとも日本人は全員思ってると思う。

私はストーリーもキャラクター設定も知っていたし、芸者文化に興味があって
岩崎峰子さんという元・祇園の一流の芸妓さんの書いた本を読んだこともあったので
見ている間中ずっと「違うよなぁ・・・」と思っていた。
ストーリーは面白かったけど、それは原作が面白いからであって
映画の製作者の能力ではないし。

チャン・ツィーもコン・リーも、演技は上手いんだけど、どうしても芸者には見えない。
芸者どころか、まず日本人に見えない時点でダメだって
何で誰もロブ・マーシャルやスピルバーグに言わなかったんだ~。

チャン・ツィーは可愛らしいんだけど、『伝説の芸者』の気品も神秘的なムードもゼロ。
コン・リーは意地悪役がハマってて恐かったけど
「性格は最悪だけど芸者としては一流」というキャラクターのはずなのに
ただの売春婦にしか見えなかった。

着物の着方も髪型も、キャラクターの性格を現すためにアレンジしてあるんだろうけど
どう見ても変。
チャン・ツィーはただのデカイおだんご頭だし、コン・リーは常に後れ毛だらけでだらしない。
着物も着崩しすぎて、背中が見えすぎてたり。
本来は腰のくびれがない方がいいので、胴にタオルを入れたりしてズン胴に見せるんだけど
コン・リーは特に、洋服体型のまま着物を着てたのですごく下品。
本当だったら、置屋のお母さんがそんな格好でお座敷に出すわけないっつの。

そういう基本的なところから間違っていて、芸者っていうものがキチンと描かれてなくて
ガッカリした。
キャラの特徴を外見で現そうとしてどうするんだ、演技で十分現せるだろうに。
ちゃんと本物志向でこだわって欲しかった。
街並みも桜の花も、ほんとにお金かけてんの?と思うほどウソくさかったし・・・
そういう美術面、ラスト・サムライのほうがまだマシだったと思う。

ミシェル・ヨーは顔は日本人には見えないものの、着物も髪型もトラディッショナルだったし
3人の中国人女優の中で一番良かった。
でもやっぱり一流の芸者には見えなくて、旅館の女将さんみたいだった。

本当に一番良かったのは、置屋のお母さん役の桃井かおりさん!!
フェイクだらけの映画の中で、桃井さんのシーンだけ真実味があった。
カッコよかった~!!
あの人が出てなかったら全てフェイクになるところだった。

あと、工藤夕貴もかなり良かった。
原作通りの、パッとしない三流芸者を上手く演じていた。
あの人は演技力がきちんとあるうえ、やっぱり日本人だしね。

ちなみに、渡辺謙と役所広司はけっこう脇役、という感じだった。
渡辺謙は一応ヒーロー役なんだけど、そんなに光ってなかったなぁ。
役所広司も意外と出番が少なかったし、やっぱ芸者は女の世界だからしょうがないか。
でも原作ではもっといっぱい2人の出番はあったと思うんだけど。

それにしても、「芸者=売春婦」という
世界の人が抱きがちな誤解を解くために一役買ったとか誰かが会見で言ってたけど
芸者と客が一緒に温泉に入るシーンがあったり
チャン・ツィーも客を騙すために別の客と寝ようとしたり
結局そういうことしちゃってるので、誤解は全然解けてないと思う。

戦前だから多少はそういうのもあっただろうし
水揚げは実際にしてたんだろうし、原作にもそういうシーンはあったんだけど
今はもうしてないってのが伝わらないから、誤解は解けてないだろう。

しかも芸者として成功するまでの苦労の部分があっさりとしか描かれてなかったので
本当に厳しい世界なんだっていうのも伝わらないと思うし。
逆に「やっぱり芸者は所詮こんなもんか」っていう悪い誤解を受けそうな感じがする・・・

なんというか、アメリカ人の「よし、すごく日本的な映画を作ったぞ!」みたいな
自己満足のみで終わっちゃってる映画だった。
by amica_bambina | 2005-12-20 18:08 | Films "M"
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