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United93

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[邦題:ユナイテッド93]

公開初日。
どんなホラー映画よりも全然恐ろしかった。
別に主人公や脇役が決まっているわけでもなく、ただ2001年9月11日に起こったことを
起こったとおりに描いていて、有名な俳優も1人も出てないのでリアルで、とにかく恐かった。

ユナイテッド93便のハイジャック実行犯4人が
家だかホテルだかで祈祷をしたり、準備して空港へ出かけるシーンから始まる。
祈祷してる時点ですでに恐くて、「これはすごく恐い映画に違いない」と思った。

先に2機がワールドトレードセンターに突っ込んで、1機がペンタゴンに突っ込む。
この3機に関しては、空港の管制塔や、何て言うのか知らないけど
とにかく飛行機の飛行状況を管理するところで働く人々の混乱した様子のみによって描かれる。
実際にその日そこで働いていた人が何人か本人役で出演もしている。

アメリカン11便が応答しなくなって、レーダーからいきなり消えてどうしたんだ!となったところで
よそから「WTCに飛行機が突っ込んだらしい」と連絡が入り
スクリーンにニュースを映して煙が出てるWTCを見て全員が呆然となったりとか
ニューヨークの空港の管制塔の人々が
実際に2機目が突っ込む瞬間を目の当たりにするシーンもあり
もちろんニュース映像も当時の本物から転用してるやつだし、恐ろしくて涙が出た。

それと同時に、まだ何も知らないユナイテッド93便は離陸してしまって
乗客は普通にくつろいで、乗務員も朝食を配る準備をしたりするシーンもちょこちょこ入るので
いつハイジャックが始まるのかと思うと、恐くて恐くてたまらない。
始まってからも、もちろん恐ろしくてたまらない。
最後の最後まで本当に恐かった。

巧いと思ったのは、乗客と乗務員を「その他大勢」的な感じで描いてたこと。
特に誰かにスポットを当てるわけでもなく、何のバックグラウンドストーリーもないので
本当にただそこに居合わせただけって感じがよく出ていた。

これがハリウッド的に作っちゃうと、結婚式に向かう途中の花婿とかが乗ってたりして
機内から花嫁に電話したりして、アルマゲドンとかタイタニックみたいになっちゃうんだけど
史実にそういう勝手な作り話を加えちゃうと途端にウソくさくなるし
そういう余計なサイドストーリーが一切なかったのが本当に良かった。
タイタニックは故意の人災じゃないしいいんだけど
この事件はテロなんだし、フィクションを加えた映画を作るのはどうかと思う。
少なくともまだ時期が早すぎる。

機内で家族に電話して最後の別れを言ってる乗客達のシーンはあったけど
それは実際にそういう電話が遺族にかかってきた事実に基づいたシーンだろうし
未確認だけど、たぶん乗客・乗務員の1人1人を忠実にキャスティングしたんだと思う。

実際に93便に乗っていた久下季哉さん役と思われる人も何度か映ってたので
帰ってからネットで調べたら、ちゃんと久下さんの名前が役名として出ているし
久下さん役を演じた人も、中国系アメリカ人とかじゃなくてちゃんと日本人の俳優さん。

決して後味が良い映画ではないけど、ナチによるユダヤ人迫害を描いた映画や
広島や長崎の原爆の悲劇を描いた映画と同じように、意義のある映画でした。
周りの観客も泣いたり、映画が終わった時にすごく拍手してたし
まだまだトラウマとしてみんなの心に残っているんだな、と思った。

でもこれでまたアメリカ人の反イスラム感情を煽ってしまうのもちょっと心配。
無害なイスラム教徒の人もたくさんアメリカに住んでると思うし。

まぁとにかく、映画としてもカメラワークも構成もすごく良かったし
今年見た中でベスト映画です。
by amica_bambina | 2006-04-28 21:44 | Films "U"
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